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探索17日目

温帯とはいえ雪の降りしきるこの島の風景を見ていると、次第に耳の奧で猛烈な吹雪の音が甦り始めていく。
また幻香が、針葉樹の香が漏れだしている。
そして私を包む周囲すら、極寒のヒースクリフの里のような寒気となり始めていた。
おそらく夏場になっても、この寒気は揺らぐことはないのだろう。
それまでに私が生きていればの話だが。
Valkoinen Kuolema がやって来るから。
Valkoinen Kuolema(ヴォルコイネン・クォレマ)。
大まかに言えば『災厄』の意を持つ単語だ。
それは故郷であるヒースクリフの里を滅ぼしたものでもあった。

元々の話として、Valkoinen Kuolema はヒースクリフの里に定着する概念だった。
人が死ぬ要員は様々だ。天寿、戦死、病死、事故死。
里ではその要員の一つに、Valkoinen Kuolema が加わっているというだけである。

それは突然に、或いは緩慢にやってきて、里の者を狙った。
突然死ぬことも、真綿で締め付けるような死に方もあった。
だがそれは既に里には、当然のように浸透した概念であった。誰も疑問は持たなかった。
またそれは、ヒースクリフの血を分けた者にだけ襲いかかっていた。
故に我々は極北へと定住し、外部とは出来る限りの交流を避け、あるいは慎重に行った。
三親等以上の親族結婚は当然だった。私の夫も遠縁だった。

それは一種の風土病とも、呪いともとれるかもしれない。
稀に興味を抱いた研究者が調査に来ることがあったが、我々がどう思うかは明白だろう。
それに我々のような戦士を生業とする一族には、一種背水の陣とも言えるような、半ば神格化した存在でもあった。



だがある日、それが凄まじい猛威を奮った。
私の家族―――夫、長男、次男、長女は全て Valkoinen Kuolema に冒され、突然に、或いは緩慢に死んでいった。
家族だけではなかった。里全てが死に絶えた。
遠方に出ていた者達も、殆どが突然にして死を迎えたと後で聞いた。
猛吹雪の中、私だけが立ちつくしていた。
私だけが生き残っていた。





いずれ、私も。
そうなる前に。
逝かなくては。
災厄の中心へ。
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