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探索3日目

面倒なことになった。
この地に私を知る者などいないと思っていた。

「ヒースクリフの者だ」と言えば、そこそこに知る者はいるだろう。
北方の民族、傭兵・騎士・冒険者などの戦士を送り出す産業の一族。
或いは Valkoinen Kuolema の一族。
もしかしてここにも一人か二人は知る者はいるかもしれない。
だが、「リキュルト・リングレット」として知る者が、まさか居るとは思わなかったのだ。

10年以上も前、私は別の冒険地に居た。
とはいっても、冒険地に出ていたのは最初の頃だけで、あとは冒険者を相手とした弓の師範をしていただけだ。
その頃の知り合いが、まさかここにいるとは!

その男の名は、ウーゴ・ソルといった。
私の隊に負けず劣らず、「胡散臭い」を絵に描いて額に入れて壁に飾ったような輩だ。
大分恰幅が良くなり頭髪も乏しくなっていたが、趣味の悪い色の服やジャンニ以上に値踏みする視線の強さ、商人風の外観に騙されてしまいそうな辣腕は健在だった。
歩き方が妙なところを見ると、怪我でも負ったのだろうか。

彼は一応、得物の関係上言葉を交わすことはあった。
師匠と言うほどのものではなく、少しばかり手ほどきをして終わり、これが当地での冒険者の扱いだ。
そして彼は恐ろしい強運と体力・精神力で、あの苛烈な地での冒険で財を成していた。
信じられるだろうか、一月あまりで冒険者の殆どが命を落とすあの地で、10年以上に渡り冒険を続けていたのだ。

諸事情でその地を、まだ存命中だった夫と離れざるをえなかったが、風の噂で引退したと聞いていた。
そしていつの間にか、仲間を雇ったかなにかして、この地に居たのだ。
面倒だ。ああ、面倒だよ。

見なかったことにしたかったが、流石というか弓使い、彼の発見が一瞬早かった。
よくもまあ、この人混みで、しかもバイザー越しの私を、しかも「今の」私を見分けられたものだ。くそっ。

まあ気障ったらしい紳士口調で話しかけては来たが、人違いだったとしてもそれを装ったとしても、いずれは看破されるだろう。
バイザーを取るしかなかった。

ああ、なんという厄日か。
これも Valkoinen Kuolema か。そんなわけはなかろうが、そういうことにしてしまいたくなる。
違和感は看破されただろう。願わくば今の同行者達に、彼の口からいらぬ情報が漏れぬ事を!
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