忍者ブログ

≪ 前の記事

次の記事 ≫

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

comments

探索9日目



■【SIDE:Fomalhaut-Mercenary】




また、目を覚ました。

周囲は眠る前の闇ではなく、石造りの遺跡から柔らかい日射しが差し込んでいた
相変わらず周囲には柔らかそうな植物が生い茂り、気温も温かく保たれている。
我々に埃が積もっていることもなく、本当に刻が凍り付いていたのだと分かった。

おそらく一度前に起きたときから、そう経ってはいないだろう。
それほど深い眠りであった感触はなく、二度寝したような気怠さがどこかに残っていた。
相変わらず私の髪は長く伸び、立ち上がれば地に引きずるほどだったし、身体から幾対も生
えた青灰色の翼は、猛禽類の翼とは思えぬほどに柔らかかった。
コンディションを整えれば、これらは全て塵に帰すことは出来るだろうが、まだ暫くはこの
身体を保ちたかった。

未だ、隣にいるこの方は眠っているのだ。
私と同じような化け物の身体になってしまった同類、そして掛け替えのない主。
同じように生えた漆黒の羽根は、私を包んでくださっていたのだ。
やはり同じように、私も羽根で包み返す。
風邪などひく由もなかろうが、翼の抱擁を解くのは不思議と躊躇われた。



地上はどうなっているのだろう。
あれから何年経過したのだろう。
Triad Chain の皆はどうなったのだろう。
我々を捜しに来ている者は居るだろうか。

そう思うと不安と焦燥がせり上がってくるのだが、この方が居るだけで直ぐに、不思議なく
らい平静を取り戻せていた。
今動いても、マナのバランスを崩して急激な睡眠状態に入りかねない。
そんなときに外敵と出くわしたら目も当てられないのだ。

正直なところ、私個人を探しに来る者などはいないと思っている。
だが、この方の―――エニシダさんと既知の者は多い。何れかの者が探しに来ていても不思
議はない。
私のような者が隣に居てはどんな顔をされるかと、微かな不安も湧き出てくる。

だが、もう離れないと誓った。
如何様な事態でも、如何様に思われても離れないと。
無論この方のためでも、私の為でもあったが―――



 「心の底から、魂の命ずるまま相手の幸せを願うなら、決してこの手を離すでない。」



―――そう言って消滅した、大未来の私の為でもあった。

刻が動き出している。
緩やかに動き出しているのが分かる。
焦燥感はない。どこか穏やかですらあるのは、隣で眠っているこの方のおかげだ。
先に起きた者の特権だ。暫しの間、穏やかな寝顔を観察する権利を頂こう。








■【SIDE:Reqult-Valkoinen Kuolema】




刻が動き出している。
穏やかに動き出しているのが分かる。
真綿で首を絞めるように緩慢なそれは、私の手にした懐中時計に現れていた。

焦燥感しかない。
本当に目的の対象はこの島で間違いないのか。
あとどれくらい時間があるのか。
あとどれくらい―――……

苛立たしげにパチリと懐中時計の蓋を閉めた。
強く閉めすぎたかと焦ったが、幸い傷一つなかった。
大事なものなのだ、つまらないことで壊してしまっては大変なことになる。
それに、これがないと『付加』の能力は使えないのだ。
こんな事で探索中断など、笑えない事態だ。

結局我々は、先発の噂に聞いた軍の小隊を突破することになった。
遠目にでもわかる珍妙な髪色の女が、こちらを向いて笑ったような気がするのは錯覚だろう
か。
だが、どうでもいい。
如何様な者の思惑も、目的も、そして私が利用されようとも、ただ一つの目的さえ達成でき
ればそれでいいのだ。
有効な時間は残り少ない。
焦燥をも力に変えて進むより他はない。
私は弓を畳み、ジャンニから手斧を受け取った。
あの軍の女に負けず劣らず珍妙な髪をした、同行者の娘に造らせたものだった。
ずしりという重みと、冷え冷えと鈍く光る金属刃が、僅かだが焦燥を和らげてくれたようだ
った。







 フォウト「ああ、刻が来たようです。満ちるまで、その時まで、暫しの微睡みを……。」



 リキュルト「―――刻は来た。満ちるまで、その時までに、悲願を成就し得んことを」

PR

0 comments

Comment