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探索17日目
Posted on Saturday, Apr 10, 2010 22:29
温帯とはいえ雪の降りしきるこの島の風景を見ていると、次第に耳の奧で猛烈な吹雪の音が甦り始めていく。
また幻香が、針葉樹の香が漏れだしている。
そして私を包む周囲すら、極寒のヒースクリフの里のような寒気となり始めていた。
おそらく夏場になっても、この寒気は揺らぐことはないのだろう。
それまでに私が生きていればの話だが。
Valkoinen Kuolema がやって来るから。
Valkoinen Kuolema(ヴォルコイネン・クォレマ)。
大まかに言えば『災厄』の意を持つ単語だ。
それは故郷であるヒースクリフの里を滅ぼしたものでもあった。
元々の話として、Valkoinen Kuolema はヒースクリフの里に定着する概念だった。
人が死ぬ要員は様々だ。天寿、戦死、病死、事故死。
里ではその要員の一つに、Valkoinen Kuolema が加わっているというだけである。
それは突然に、或いは緩慢にやってきて、里の者を狙った。
突然死ぬことも、真綿で締め付けるような死に方もあった。
だがそれは既に里には、当然のように浸透した概念であった。誰も疑問は持たなかった。
またそれは、ヒースクリフの血を分けた者にだけ襲いかかっていた。
故に我々は極北へと定住し、外部とは出来る限りの交流を避け、あるいは慎重に行った。
三親等以上の親族結婚は当然だった。私の夫も遠縁だった。
それは一種の風土病とも、呪いともとれるかもしれない。
稀に興味を抱いた研究者が調査に来ることがあったが、我々がどう思うかは明白だろう。
それに我々のような戦士を生業とする一族には、一種背水の陣とも言えるような、半ば神格化した存在でもあった。
だがある日、それが凄まじい猛威を奮った。
私の家族―――夫、長男、次男、長女は全て Valkoinen Kuolema に冒され、突然に、或いは緩慢に死んでいった。
家族だけではなかった。里全てが死に絶えた。
遠方に出ていた者達も、殆どが突然にして死を迎えたと後で聞いた。
猛吹雪の中、私だけが立ちつくしていた。
私だけが生き残っていた。
いずれ、私も。
そうなる前に。
逝かなくては。
災厄の中心へ。
また幻香が、針葉樹の香が漏れだしている。
そして私を包む周囲すら、極寒のヒースクリフの里のような寒気となり始めていた。
おそらく夏場になっても、この寒気は揺らぐことはないのだろう。
それまでに私が生きていればの話だが。
Valkoinen Kuolema がやって来るから。
Valkoinen Kuolema(ヴォルコイネン・クォレマ)。
大まかに言えば『災厄』の意を持つ単語だ。
それは故郷であるヒースクリフの里を滅ぼしたものでもあった。
元々の話として、Valkoinen Kuolema はヒースクリフの里に定着する概念だった。
人が死ぬ要員は様々だ。天寿、戦死、病死、事故死。
里ではその要員の一つに、Valkoinen Kuolema が加わっているというだけである。
それは突然に、或いは緩慢にやってきて、里の者を狙った。
突然死ぬことも、真綿で締め付けるような死に方もあった。
だがそれは既に里には、当然のように浸透した概念であった。誰も疑問は持たなかった。
またそれは、ヒースクリフの血を分けた者にだけ襲いかかっていた。
故に我々は極北へと定住し、外部とは出来る限りの交流を避け、あるいは慎重に行った。
三親等以上の親族結婚は当然だった。私の夫も遠縁だった。
それは一種の風土病とも、呪いともとれるかもしれない。
稀に興味を抱いた研究者が調査に来ることがあったが、我々がどう思うかは明白だろう。
それに我々のような戦士を生業とする一族には、一種背水の陣とも言えるような、半ば神格化した存在でもあった。
だがある日、それが凄まじい猛威を奮った。
私の家族―――夫、長男、次男、長女は全て Valkoinen Kuolema に冒され、突然に、或いは緩慢に死んでいった。
家族だけではなかった。里全てが死に絶えた。
遠方に出ていた者達も、殆どが突然にして死を迎えたと後で聞いた。
猛吹雪の中、私だけが立ちつくしていた。
私だけが生き残っていた。
いずれ、私も。
そうなる前に。
逝かなくては。
災厄の中心へ。
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